アメリカ海兵隊の歴史<129>ハリケーン・サンディ救援活動

  • 実施期間: 2012年11月1日〜10日
  • 実施場所: ニューヨーク州・ニュージャージー州
  • ケース性格: 国内HA/DR(人道支援・災害救援)
  • 参加部隊: 第26海兵遠征隊

2012年10月29日、アメリカ軍北部軍司令部は各軍ならびに国防省内組織に対して、連邦緊急事態管理庁(FEMA)、州政府、地方政府によるハリケーン・サンディ救援活動を支援する準備を開始するよう発令した。これを受け、直ちに被災地周辺の州兵組織が動員を開始するとともに、各軍の各種輸送ヘリコプター、パラシュート部隊、情報収集・分析用航空機、その他各種航空機、戦術データリンクシステムなどが24時間態勢で即時出動状態に入った。

10月31日までには、1万名以上の州陸軍と州空軍が被災地の緊急機関に対する支援活動を開始した。アメリカ輸送軍(USTRANSCOM)は医療関係者120名をニューヨークに送り込み、引き続き緊急医療支援の増援航空機・医療部隊のスタンバイ態勢を固めた。

陸軍工兵隊は、FEMAからの25件に及ぶ支援要請を受けて直ちに400名の要員を緊急出動させた。最優先に取り組んだのはニューヨーク市の洪水軽減作業であった。そのため陸軍工兵隊救援部隊は100基もの大型ポンプシステムを搬入し、さらに北部軍司令部に対して追加ポンプ100基を要請した。また、陸軍工兵隊はニューヨーク州とニュージャージー州の発電作業をはじめとする各地での支援作業に従事した。

戦闘部隊に対しても災害救助支援命令がくだされ、11月1日には海軍・海兵隊チームも出動準備を開始した。キャンプレジューンで海外展開パトロール任務錬成中であった第26海兵遠征隊(26th MEU)は、飲料水や燃料を始めとする救援物資、発電機や戦闘工兵用重機など救援資機材それに重輸送ヘリコプターCH-53Eスーパースタリオン、汎用ヘリコプターUH-1Nヒューイなどとともに急襲揚陸艦ワスプ(LHD-1)に乗艦を開始した。出動命令を受けてから24時間以内にワスプへの救援物資・資機材などの積み込みを完了させた海軍・海兵隊救援チームは、被災地沖を目指して出港した。

11月3日、海軍・海兵隊チームは、最も深刻な被害を受け地元救援諸機関や州兵部隊などの救援活動も地形的条件から遅れていたニューヨーク市のスタテン島地区の救援支援活動に従事するために、強襲揚陸艦ワスプからUH-1Nヘリコプターに分乗した偵察部隊を派遣した。空中からの偵察ならびに、被災地に降着しての緻密な偵察活動の情報をもとに、第26海兵遠征隊は具体的な救援支援活動準備を整えるとともに、12機の各種ヘリコプターと300名の海兵隊員・海軍兵員により資機材の揚陸を開始した。

そして、翌4日からは、ブルックリン沖に停泊したワスプを洋上拠点にした海兵隊員たちは瓦礫を道路から除去し通航を可能にする作業や、被災住民の家屋の瓦礫の除去、強襲揚陸艦内 で飲料水を製造して被災者へ配布する作業、などの支援活動を1週間ほど実施した。海軍・海兵隊チームには、強襲揚陸艦ワスプ以外にも水陸両用戦用艦艇が加わり、各種ヘリコプターや汎用揚陸艇などを活用して海兵隊員と海軍移動建設大隊員それに陸軍工兵隊や州兵部隊の被災者支援活動への補給活動を実施した。

スタテン島を中心としたニューヨーク州・ニュージャージー州の被災地に対する救援支援活動に参加した海軍・海兵隊チームは以下のとおり。

  • 第26海兵遠征隊(26th MEU)
  • 海軍移動建設大隊(MNCB-11)
  • 強襲揚陸艦ワスプ(LHA-1)
    • 海軍SH-60ヘリコプター、海軍MH-53ヘリコプター
    • 海兵隊CH-53Eヘリコプター、海兵隊UH-1Nヘリコプター
    • 汎用揚陸艇(LCU)
  • 輸送揚陸艦サンアントニオ(LPD17)
    • 海軍移動建設大隊第202整備隊(CBMU202)
    • 汎用揚陸艇(LCU)
  • 輸送揚陸艦チャーター・ホール(LSD50)
    • 汎用揚陸艇(LCU)
  • 給油・補給艦カナワ(T-AO-196)

参考文献:

  • U.S.Department of Defense. http://www.defense.gov/home/features/2012/1012_sandy/内の記事.
  • Marine Corps Center For Lessons Learned. “Marine Corps Support To Hurricane Sandy Relief Efforts.”

〜添付図版等の公開準備中〜

    “征西府” 北村淳 Ph.D.

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