アメリカ海兵隊の歴史<124>フィリピン・インドネシア被災地救援

〜添付図版等の公開準備中〜

  • 実施期間: 2009年10月
  • 実施場所: フィリピン・インドネシア
  • 作戦の性格: HA/DR(海外での人道支援・災害救援作戦)

第31海兵遠征隊が台湾でのHA/DR作戦から帰還して1ヶ月半過ぎた9月26日、台風ケツァーナがフィリピンを襲い風速140ノット以上の強風と以前より降り続いていた大雨による地盤の緩みにより大洪水と広範囲に渡る土砂崩れを引き起こした。引き続き9月30日、インドネシアのスマトラ島でマグニチュード7.6の大地震が発生して750名以上の死者を出す大きな災害が発生した。フィリピン政府とインドネシア政府はアメリカ政府に対して支援を要請したため、アメリカ政府は太平洋軍に対して人道支援・災害救援活動(HA/DR)の実施を命じた。

ちょうど第31海兵遠征隊と第11水陸両用戦隊はフィリピン軍との合同演習PHIBLEXを実施中であったため、第Ⅲ海兵遠征軍と第7艦隊は、第31海兵遠征隊と第11水陸両用戦隊を分割して、第3海兵遠征旅団が指揮をとるフィリピン救援チームと、CTF-76が指揮をとるインドネシア救援チームを編成して被災地に派遣することにした。

10月1日、第3海兵旅団司令官が指揮するフィリピン救援支援部隊の第31海兵遠征隊は、医療関係スタッフに民生医療プログラムを実施させるためマリキナ市の小学校に診療ポストを開設させた。そこでは760名以上の患者に対して医療ならびに歯科治療を施した。同日、第31海兵遠征隊はケソン市の食料不足に見舞われていた市民に対して2,400食の食事を供給した。そして救援支援部隊は、12日までの10日間で、150万ポンドの食料、650ケースの飲料水タンク、衣類が入った39,000袋の救援バッグを被災地に配布した。

一方、CTF-76指揮下のインドネシア救援支援部隊には、第31海兵遠征隊の一部と海兵隊CH-53Eスーパースタリオン大型輸送ヘリコプター数機、それに海軍第12戦術航空管制チームが組み込まれ、10月3日、輸送揚陸艦デンバー(LPD 9)に乗り込みインドネシアに急行した。8月の台湾での台風災害救援活動の経験から、CTF-76はUSSデンバーのほか駆逐艦マッキャンベル(DDG 85)と戦闘輸送補給艦リチャードE.バード(T-AKE 4)が随伴した。

10月4日、CTF-76救援支援艦隊はスマトラ島ペダン港沖に到着し、被災状況調査チームと前進指揮部隊がペダンにヘリコプターで上陸した。ジャカルタに前線指揮所を設置すると、アメリカ大使館やUSAIDとともにインドネシア陸軍と接触を開始し、被災状況調査に着手した。被災状況調査チームはペダン市内の4つの病院が破壊されていたため医療チームの応援を太平洋軍司令部に要請し、グアムから医療活動に当たるアメリカ空軍人道支援即応チームを乗せたC-17輸送機が派遣された。

CTF-76の軍艦をベースにして、第31海兵遠征隊はCH-53E大型輸送ヘリコプターを活用して被災地、とりわけ市街地から離れて孤立した集落への食料、飲料水、医療品を始めとする生活支援物資の供給を行った。およそ2週間にわたる救援支援活動で、ヘリコプターは150ソーティを実施して、64万ポンドの救援物資と1,117名の被災者を搬送した。

参考文献:太平洋海兵隊司令部より提供された資料

本コラムの著者:“征西府”主幹 Centre for Navalist Studies 北村淳 Ph.D.

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