アメリカ海兵隊の歴史<122>台湾台風被災地救援

〜添付図版等の公開準備中〜

  • 実施期間: 2009年8月
  • 実施場所: 台湾
  • ケースの性格: HA/DR

2009年8月7日、台湾に台風モラコット(日本では台風8号)が上陸し翌日にかけて台湾を襲った。この台風により台湾各地で斜面崩壊や土石流が頻発して461名が犠牲となり192名が行方不明となった。家屋、インフラの被害総額は33億台湾ドルと見積もられる極めて大規模な自然災害であった。

台湾政府からの援助要請を受けたアメリカ政府は太平洋軍に災害救援活動の出動命令を発した。そして海兵隊を積載した海軍第11水陸両用戦隊が出動することになった。ちょうど台湾を台風モラコットが襲った日、沖縄を本拠地にする第31海兵遠征隊は強襲揚陸艦エセックス(LHD-2)を中心とする水陸両用即応グループとともにパトロールから沖縄に帰還したところであった。エセックスと揚陸艦トーチューガ(LSD-46)は沖縄で海兵隊員や航空機・資機材を全て下ろして佐世保に向かっていたため、第11水陸両用戦隊の揚陸艦デンバー(LPD-9)が一旦沖縄に帰還した第31海兵遠征隊の海兵隊員たちと2機のMH-53E大型輸送ヘリコプター、2機のMH-60S救難ヘリコプターそれに LCAC1機を搭載して台湾沖へと沖縄ホワイトビーチを出発した。同時に、沖縄からは救援物資を搭載したC-130輸送機が台湾へ向かった。このアメリカ軍の救援活動により、1979年にアメリカ政府が中国共産党政府と国交を結んで以降初めてアメリカ軍が公式に台湾領内へ立ち入ったこととなった。

海兵隊と海軍のヘリコプター救難チームは、戦術航空管制チームを台湾軍航空基地に派遣して台湾軍と協力してアメリカ軍ヘリコプターの活動を管制した。MH-60S救難ヘリコプターにより、被害の調査や輸送ヘリコプター着陸ゾーンの選定などを実施し、海兵隊MH-53E大型輸送ヘリコプターによって救援物資の被災地前線への搬入作業を開始した。2機のMH-53Eヘリコプターにより6日間で54飛行を実施し、20輛の建設重機、20ケースの救難用コンテナ、それに255,800ポンドの救援物資を搬入した。救援支援活動を成功裏に完遂した第31海兵遠征隊はUSSデンバーで沖縄に帰還し、USSデンバーは佐世保に帰還した。

参考文献:太平洋海兵隊司令部より提供された資料

本コラムの著者:“征西府”主幹 Centre for Navalist Studies 北村淳 Ph.D.

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