アメリカ海兵隊の歴史<117>インドネシア大津被災地救援

〜添付図版等の公開準備中〜

  • 実施期間: 2004年12月
  • 実施場所: インドネシア
  • 作戦の性格: HADR(人道支援・災害救援作戦)

2004年12月26日午前8時直前、インドネシアのスマトラ島沖インド洋でマグニチュード9.1-9.3の巨大地震が発生した。この地震により津波が発生しインド洋沿岸諸国を襲った。津波は広範囲に達しインドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、モルディブ、ソマリア、マダカスカル、セーシェル、タンザニア、ケニアなどで死者、負傷者が出た。とりわけ地震と津波の双方の被害をうけたインドネシアのアチェ周辺の被害が最も甚大であり、アチェを含んだインドネシアでは死者13万名以上行方不明者4万名近くそれに10万名以上の負傷者が出た。また津波によってスリランカでは3万5千名以上が死亡し、インドでもおよそ1万2千名が死亡し1万名以上が行方不明となった。

直ちに国際社会が義援金の拠出(日本はオーストラリア、ドイツに続いて3番目の拠出額)を表明するとともに、軍隊や救援隊の派遣を行った。インド洋での洋上給油活動に従事し日本に帰還する途中の海上自衛隊艦艇はインドネシア沖に急行し、もっとも早く救援活動のために駆けつけた外国軍隊となった。その後も、エアクッション揚陸艇を積載し陸上自衛隊の中型輸送ヘリコプターや陸上自衛隊救援隊員たちを乗せた海上自衛隊輸送揚陸艦や補給艦それに駆逐艦からなる自衛隊救援部隊も派遣され、自衛隊員たちは医療活動や復旧支援活動に多大な貢献をなした。

巨大地震・津波の発生を受けて、同26日、ホノルルのアメリカ太平洋軍では作戦計画チームを編成した。翌27日には、C-130輸送機8機とP-3哨戒機3機にタイのウタパオ基地(タイ王室海軍航空基地、アメリカ軍も使用している)への展開命令を発した。また、東南アジア海域を航行していたボノム・リシャール遠征打撃群とリンカーン空母戦闘群に対して、アチェ沖へ急行するよう発令した。そして、太平洋軍は統合支援軍(CSF)の編成を急いだ。同日中に、横田基地からC-130輸送機がウタパオ基地に向けて発進した。

28日、第536統合支援軍(CSF-536)司令部が設置され、アメリカ軍による災害救援・人道支援(HA/DR)作戦、Operation Unified Assistance、が本格的に始動した。CSF-536の司令官には第Ⅲ海兵遠征軍(沖縄を本拠地とする海兵隊部隊)司令官ブラックマン中将が任命され、当面の支援活動の中心となるのはボノム・リシャール遠征打撃群の中心となっている各種揚陸艦に乗り込んでいる第Ⅲ海兵遠征軍である。CSF-536は、直ちに災害救援見積もりチーム(DRAT)を3個部隊編成し、タイ、スリランカ、インドネシアの被災地に派出した。

29日からは、C-130やP-3がウタパオ基地に続々と到着し、タイやスリランカでの被災地での状況把握が開始された。翌日からはインドネシアでの被災状況確認作業も始まり、アメリカ海軍は各種揚陸艦や空母に加えて事前集積艦を含んだ多数の輸送艦や補給艦も被災地沖に向かわせる命令を発した。そして、31日からはCSF-536の指揮下の各種海兵隊・海軍ヘリコプターによる、被災地での救援・支援活動が開始された。CSF-536司令部も、1月2日よりウタパオ基地で指揮を取り始め、海兵隊員と海軍将兵からなるCSF-536主力部隊は、最も被害が大きかったバンダ・アチェ周辺の救援・支援活動に投入された。支援活動が終了しCSF-536が撤収したのは2月12日であった。CSF-536撤収後も、アメリカ海軍病院船マーシーによる医療活動は続けられ、アメリカ軍のHADR活動が終了したのは3月16日であった。

CSF-536指揮下で活動した部隊・資材

  • 第Ⅲ海兵遠征隊を中心とした11,674名
  • 揚陸艦3隻、航空母艦1隻を含むアメリカ海軍各種戦闘艦12隻
  • アメリカ海軍各種補給艦7隻
  • アメリカ海軍輸送艦6隻
  • 海洋調査船1隻
  • 高速双胴輸送船2隻
  • アメリカ沿岸警備隊警備艦1隻
  • 海兵隊・海軍ヘリコプター68機
  • 海兵隊輸送機・空中給油機18機
  • 空軍輸送機・空中給油機14機
  • 海軍P-3哨戒機9機
  • その他の固定翼航空機(海軍・海兵隊)50機
  • その他の固定翼航空機(空軍)52機

CSF-536によるインドネシアへの救援活動:

  • 救援物資搬入: 2,295トン
  • 浄水供給: 223,587ガロン
  • 食料供給: 1,962トン
  • 治療患者: 323名

CSF-536によるスリランカ・モルジブへの救援活動:

  • 救援物資搬入: 88トン
  • 浄水供給: 224,132ガロン
  • 食料供給: 157トン
  • 治療患者: 1,834名

CSF-536によるタイへの救援活動:

  • 救援物資搬入: 576トン
  • 浄水供給: 2,375ガロン
  • 食料供給: 5トン
  • 治療患者: 72名

参考文献:

  • USPACOM, 2005, Operation Unified Assistance.
  • 太平洋海兵隊司令部より提供された資料

本コラムの著者:“征西府”主幹 Centre for Navalist Studies 北村淳 Ph.D.

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