米軍最高幹部の議会証言:もはや第一列島線周辺ではアメリカ軍は中国軍に優勢を保てない

すでにバイデン政権下においてアメリカ海軍は中国海軍に保有艦艇数で追い抜かれてしまい、艦艇の数だけでなく戦力内容においてもアメリカ海軍が中国海軍を圧倒しているのは航空母艦と戦略原潜だけという状態である。

ただし、中国海軍、中国空軍ならびに中国ロケット軍は、中国近海に接近してくるアメリカ海軍航空母艦を撃破するための長射程ミサイルや極超音速滑空体などの強力な接近阻止兵器を多数取り揃えており、アメリカ海軍は伝統的な空母中心の侵攻作戦を実施することは中国相手には極めて困難な状況に立ち至っている。一方の中国海軍は、アメリカによる中国侵攻を防ぐことが氏名であるため、空母遠征部隊を編成してグアムやハワイやアメリカ本土を攻撃する必要性はない。したがって、航空母艦戦力の優劣は米中戦に限るならば決定的優勢要因とはみなせない。

同様に、戦略原潜すなわち核暖冬搭載大陸間弾道ミサイルを発射する能力を持つ原子力潜水艦は、中国がアメリカに先制核攻撃を加えた場合の対中報復攻撃、あるいはアメリカによる中国への先制核攻撃、ならびにそれらの核攻撃を敢行する可能性による威嚇、といった用途のためにのみ有用な兵器である。いくら台湾問題、南シナ海問題、尖閣問題などでアメリカが中国と軍事衝突に立ち至った場合においても、いきなり米中双方が核兵器を使用する事態は(アメリカはかつて2度核兵器を使用した前例を持つ国際社会唯一の戦略核兵器使用国であるため、発生確率ゼロとは言えないものの)限りなくゼロに近いため、戦略原潜の優劣も決定的優勢要因とはみなせない。

そのため、アメリカ海軍内外の対中戦略専門家たちの多くは米中対決の戦域となるであろう第一列島線周辺地域では、アメリカ海軍が中国海軍に対して優勢を維持することは極めて困難であると考えるに至っている。

このような状況下で、中国との軍事衝突に際してアメリカ軍最前線の総指揮を執る米軍インド太平洋軍司令官(地理的条件から海軍大将が任じられることになっている)サミュエル・パパロ提督は、中国航空戦力(空軍と海軍航空隊)は第一列島線周辺戦域においてアメリカ航空戦力(空軍と海軍ならびに海兵隊の航空部隊)を圧倒し、中国側が航空優勢を確保する能力を有するようになってしまっている、とアメリカ連邦議会上院軍事委員会で証言した。

H-6爆撃機

 パパロ司令官によると、中国軍は2100機以上の各種戦闘機とH-6爆撃機を200機要しているだけでなく、最新型航空機の設計も進展しており、アメリカの1.2倍のスピードで軍用機を産出し続けているのに加えて、中国軍の長射程対空ミサイルはアメリカ軍機にとって極めて深刻な脅威となっていると指摘した。

パパロ提督は、現状においては第一列島線周辺空域において「中国がアメリカの航空戦力を壊滅させる可能性のほうが、アメリカが中国の航空戦力を壊滅させる可能性よりも、大きいと考えるべきである」といった対中戦略専門家たちの分析がなされているのが現状であるため、連邦議会は危機的状況を直視し十分な対策を講じなければならない、と要請した。

もちろんパパロ司令官が指摘した状況は、戦時において日本や韓国といった同盟国がアメリカ側に全面的に協力して日本や韓国内の海軍施設や航空施設をアメリカ軍が自由に使用できる状況下においての話である。したがって、日米安保条約や日米地位協定が不安定な状況となり、アメリカ軍が日本の軍事施設や港湾それに航空施設などを自由自在に用いることができなくなった場合には、アメリカ軍は第一列島線周辺で海上優勢や航空優勢を中国軍と争うことなど全くできないほど劣勢に立ち至ることは自明の理である。

第一列島線・第二列島線(白:日米海軍拠点、赤:中国海軍拠点)

トランプ大統領だけでなく日本国内にも、日米安保条約はアメリカが一方的に日本を守っている片務的条約だ、などと考える向きもあるが、とんでもない話である。アメリカは日米安保条約や日米地位協定を振りかざすことによって日本国内の軍事施設や港湾それに航空施設などをアメリカの国益を守るための対中戦争のために自由自在に用いることができるのであるから、日米安保条約はアメリカが日本防衛という負担を一方的に負う片務的仕組みということは全くの誤りで、アメリカが他国の土地を軍事的に最大限に用いることを保証するという日本にとっては属国的条約、アメリカにとっては笑いが止まらない条約にほかならない。

    “征西府” 北村淳 Ph.D.

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