アメリカ海軍は、台湾海峡を軍艦(あるいは軍用機)で通航する作戦を断続的に実施している。言うまでもなく台湾海峡は台湾(台湾島)と中国本土の間を隔てている海峡であり、中国による台湾侵攻が敢行される際には主戦域となる海峡だ。
中国軍が海洋戦力(艦艇戦力、航空戦力、各種ミサイル戦力)を強大化させるに伴って、当初アメリカ海軍は中国を威嚇する目的で台湾海峡を始めとする台湾周辺に艦艇や航空機を送り込んでいた。
しかし、中国海洋戦力はアメリカ海軍の威嚇などものともせぬほど強力となってしまった現在、アメリカ海軍による台湾海峡通航作戦は「自由主義諸国のリーダーであるアメリカは、台湾を見捨てはしない、という姿勢をアメリカは維持している」というアリバイ作りのような行動とみなせよう。

アメリカ海軍の駆逐艦USSラルフ・ジョンソン(DDG-114)と海洋観測艦USNSボーディッチ(T-AGS-62)は、2月10日から12日かけて東シナ海から台湾海峡を通過して南シナ海へと航行した。アメリカ海軍当局によると、2隻のアメリカ軍艦は中国の領海からも台湾の領海からも外側の台湾海峡中央公海海域を平和裏に通航したという。

これに対して中国軍側は「アメリカ軍の行動は周辺地域における安全保障上の危険性を増大させている。中国軍部隊は、中国の主権と安全、そして東アジア地域の平和と安定を断固として守り抜くため、厳戒態勢を維持する」との声明を発し、実際に中国海軍と中国空軍は軍艦と航空機を出動させて米軍艦を追尾し監視を続けた。
前回のアメリカ海軍軍艦による台湾海峡通航作戦は、昨年(2024年)10月に行われ、その際にはアメリカ海軍駆逐艦USSヒギンズ(DDG-76)とカナダ海軍フリゲートHMCSバンクーバー(FFH-331)が参加した。その際も、中国側は今回同様の反応を示している。
今回の台湾海峡通航作戦は、トランプ政権が発足してから初めてのもので、政権スタート後わずか20日目に実施されたため、今後トランプ政権下では頻繁に作戦実施が許可される(この種の作戦を実施するにはホワイトハウスの許可が必要である)ものと米海軍内外の対中強硬派は期待している。
ちなみに、バイデン政権下での台湾海峡通航作戦は下記のように低調(月に1回のペースは達成されなかった。また厳密には、航空機の通過はこの種の海軍作戦には該当しない)であった。
- 2024年:8回(軍艦5回、軍用機3回)
- 2023年:11回(軍艦7回、軍用機4回)
- 2022年:10回(軍艦9回、軍用機1回)
- 2021年:9回(軍艦9回)