アメリカ海軍関係者たちが胸をなでおろしたトランプ石破会談

筆者周辺の米海軍関係者たちの多くは、かつて石破首相が日米地位協定の見直しを口にしたことがあったため、石破新政権に対して若干危惧の念を抱いていた。しかし石破首相とトランプ大統領との会談によって、そのような危惧は消え去ったようだ。


というのは、石破首相にとっては本意ではなかったのであろうが、徹底した媚びへつらいヨイショ戦術を繰り出し、これまでの歴代首相同様に軍事的宗主国であるアメリカの大統領の歓心を得ることに務めただけでなく、「尖閣は日米安保条約第5条の範囲内にある」というアメリカ大統領にとっては恒例となっている軍事的には無意味な“コミットメント”を、これまた軍事リテラシーが高いと言われている石破首相にとっては真意ではないのであろうが、歓迎するふりを演じていたからだ。そのため、石破首相の日米同盟への姿勢に不安を感じていた米海軍関係者たちも「これまでの日本の首相と同類だ」と一安心しているわけである。



在野の学者である筆者が日米地位協定の改定どころか日本は日米同盟を離脱し強力な海軍力を建設してアメリカの軍事的属国から独立国家に転身すべきであると論じて(たとえば「米軍最強という幻想」PHP研究所)いても、それは単なる愛国的学者の説に過ぎないため、愛国的軍人である米海軍関係者たち自身がアメリカを愛する心情の裏返しとして、何ら警戒を抱かず親交は続いている。

しかし、日本の首相が日米同盟離脱の可能性とまではいかなくとも日米地位協定の見直しを正式に持ち出した場合には、原爆攻撃により叩きのめして以来日本を軍事的属国として取り扱ってきたアメリカにとり安定的かつ従順な日本に対する戦略の練り直しという面倒な課題を解決しなければならなくなってしまうのだ。

口にこそ出さないが、現時点そして近い将来に至るまでのアメリカ海軍、アメリカ造船能力、アメリカ海運力すべての凋落状況から判断すると、とてもアメリカが東アジア戦域で中国海洋戦力に勝利することなど不可能であることは、中国海洋軍事力(海軍力、航空戦力、ロケット軍戦力、造船能力、海運力)の現状を知るアメリカ海軍関係者ならば常識である。

このような状況下で、日米地位協定の見直し作業などが正式に開始されたならば、日米地位協定の裏マニュアル的存在であり、アメリカ軍が80年にもわたって手にし続けて来た日本の領域を軍事的必要性から自由に用いることができるという大きな利権を確保するための仕組みである日米合同委員会にまで火の粉が及ぶことになりかねず、それこそアメリカ軍事戦略にとって弾除けの胸壁あるいは捨て駒として利用価値が高い日本を自由に使えなくなってしまうおそれが生じてしまいかねないのだ。

このような危惧は、石破首相も安倍首相や岸田首相と同じくアメリカの忠実な手先となって中国や北朝鮮それにロシアに対する防波堤の役割を自ら進んで担ってくれるアメリカにとってはこの上もなく頼もしい類型の日本人であることに変わりはなかった、ということで消え去ってしまった様子である。

    “征西府” 北村淳 Ph.D.

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