ホルムズ海峡封鎖に向けたイランの選択肢:抑制策か?強硬策か?

イランの国会は、ホルムズ海峡の封鎖を命じ世界の化石燃料供給の50%の通航を遮断すると警告した。米国によるイランの主要核施設3カ所への壊滅的な攻撃から24時間以内に発令されたこの命令が実行されれば、西側諸国だけでなく、イランの同盟国である中国にも同等の経済的損害を与えることになる。しかし、イランは、中国などの友好国への損害を回避するために、第一次世界大戦におけるイギリスによるドイツ封鎖に倣うか、あるいは、イランが装備、資金、訓練を提供した代理組織であるフーシ派が19ヶ月に及ぶ対船舶作戦で用いた対船舶攻撃戦術を拡大する可能性がある。

ホルムズ海峡 (wikimedia commons)

<イギリス方式>

イランが第一次世界大戦における英国の例に倣うならば、イラン海軍と革命防衛隊は出航中の化石燃料運搬船に乗り込み、捜索を行い、中国やその他の非西側諸国行きの輸送船は解放する一方、米国とその同盟国行きの輸送船は拿捕・拘留することになるだろう。これにより、中国をはじめとするイランと同盟を結んでいる国々は、引き続き石油や液化天然ガスを受け取ることができる。

英国は第一次世界大戦において同様の戦術を用い、「海の自由」のために戦う意志を持つ、成長を続ける海洋大国である米国を敵に回すことなく、ドイツへの戦略物資の供給を遮断した。この戦術は、1917年のドイツの「無制限潜水艦作戦」によって最終的に米国が連合国側として参戦するまで、アメリカの中立をうまく確保することに成功した。

このような英国のアプローチを模倣することは、米国とイスラエルに無条件停戦を受け入れるよう圧力をかけることで、EU諸国をイランとの妥協へと駆り立てるという更なる利点をイランにもたらすことになる。また、トランプ大統領の米国内反対派も同様の行動を取るよう促す可能性もある。しかし同時に、トランプ政権がイラン革命防衛隊(IRGC)海軍とイラン・イスラム共和国海軍、そしてそれらの基地を破壊するきっかけにもなりかねない。

<フーシ派方式>

イランの強硬派は、イランが訓練・支援したアル・フーシ派が19ヶ月に及ぶ対船舶作戦で用いたような、より暴力的なアプローチを好んでいる。この期間、フーシ派は350隻以上の船舶を攻撃し、40隻以上を損傷させ、2隻を沈没させた。彼らは海上で船舶に対して最初に弾道ミサイルを使用し、無人システムの戦闘への活用に関してはウクライナのやり方を模倣している。

フーシ派によるドローン、高速攻撃艇、対艦巡航ミサイルの運用方法は、イラン海軍が海軍演習で示した戦術を彷彿とさせる。したがって、フーシ派の対船舶作戦は、イランが今後どのように対船舶作戦を展開していくかの指針となるはずだ。いずれにせよ、イランが武力による対船舶作戦を実施する場合には、フーシ派以上に様々な戦術を繰り出してくることは間違いない。(それらの戦術については、引き続き検討する。)

    アメリカ海軍大佐(退役)カール・O・シュスター

    “征西府” 北村淳 Ph.D.

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