アメリカ海兵隊総司令官エリック・スミス大将は、沖縄からグアムに海兵隊の一部を移転する現在の日米合意は、対中戦という軍事的観点から考えると極めて大きな誤りである、との趣旨の発言をした。
1月20日、アメリカ海兵隊総司令官エリック・スミス大将は、ワシントンD.C.で開催された国防記者会(世界各国およそ50カ国の報道機関から派遣されている国防安全保障関係特派員の団体で、ジョージ・ワシントン大学メディア&国防プロジェクトを拠点にしている)で、沖縄駐留海兵隊の兵力の一部をグアムとハワイに移転する計画についての意見を表明した。
在沖縄海兵隊およそ1万9千名のうち9千名がグアムやハワイに移転する計画は、2012年に日米両政府によって合意された。したがって、その二国間合意が改定されない限り、海兵隊は計画通りに移転を推し進めるのは当然である、とスミス大将は述べたうえで、沖縄駐留海兵隊の兵力を削減することは、現状における対中戦略的には極めて危険な動きであり、海兵隊を間違った方向へ向かわせている、と警告した。
スミス総司令官は、沖縄は中国軍のいう第一列島線上に位置しており、米軍にとっては地中最前線に位置することになる。そのような戦略拠点での抑止力としての海兵隊戦力を削減してしまうことは、中国に利する状態をもたらすことになる、と指摘し、信頼できる抑止力(すなわち海兵隊)は勝利するために存在すべきである、と述べた。またスミス大将は、日本政府との合意はそれが変更されるまでは尊重し遵守するが、海兵隊は「この地域における海兵隊部隊にとって最適な場所を模索し続ける」と語った。
在沖縄海兵隊兵力のグアムやハワイへの移転という日米合意がなされた2016年当時と比べると現在の中国軍とりわけ海軍・空軍・ロケット軍を中心とする接近阻止戦力は飛躍的に強化されている。それに反してアメリカの海軍力と空軍力は弱体化しており、戦闘能力を維持している海兵隊も、現実には出動に際して必要となる水陸両用戦用の海軍艦艇の稼働能力が低下しているため、出撃したくてもできない可能性が高まっている。
このような状況に鑑みて、海兵隊は中国軍相手には伝統的な水陸両用作戦概念(敵海岸線に海上や上空から殺到し強襲上陸を敢行し橋頭堡を確保し、後続する補充部隊や陸軍の大部隊による侵攻の先鋒となる)を捨て去り、新たな作戦概念を打ち立てた。すなわち、中国軍による侵攻態勢の予兆が確認されたならば、地対艦ミサイルや防空ミサイルそれに場合によっては対地攻撃用長距離巡航ミサイルなどを装備した小規模部隊を多数南西諸島やフィリピン群島などに分散展開して、第一列島線に迫り来る中国艦艇や航空機を待ち受けて撃破する、というものである。
海兵隊の新たな作戦概念においては、中国軍の不穏な動きを察知したら間髪を入れずに、中国軍が出動する以前に、九州から南西諸島そしてフィリピン群島の可能な限り多数の地点に沖縄から海兵隊ミサイル部隊を緊急展開させなければならない。当然ながら、沖縄に駐留すべき海兵隊の兵力を削減してしまえば、緊急展開させる部隊数が減少することになり、海兵隊の新戦略に
ただし、沖縄を海兵隊が本拠地にしている状態が果たして中国海洋侵出戦略にとって抑止力すなわち抑止効果を発揮するのかどうか?という疑問が存在している。また、海兵隊の新戦略は、中国艦艇や航空機の侵攻に一撃を加えるための緊急展開待ち伏せ部隊を多数、同盟国とはいえ、日本やフィリピンといった外国の領土内に展開することを大前提としていることは、日本とフィリピンが当然ながら米軍の都合に従うことを前提としているという属国視の顕れであるとみなすことができるのである。