中国海軍・中国海警局による宮古海峡海上封鎖!? [2025/01/14]

年明けそうそう中国海軍ならびに中国海警局が宮古海峡で海上封鎖訓練を実施していたとの報道がなされた。この訓練自体は12月22日に実施されていたものであるが、本年の元日に読売新聞が報道し、その報道をもとに香港の英字紙(South China Morning Post)も報道している。

この中国海軍が海上封鎖訓練をしていたらしいという報道は「宮古海峡(沖縄本島と宮古島の間に横たわる海域)を中国海軍フリゲート3隻と中国海警局武装巡視船3隻(うち1隻は世界最大の巡視船のためフリゲートよりも大型)が航行した」という事実と、日本政府関係者が「海上封鎖を示唆する特異な動きだ」と述べたことをもって「中国、宮古海峡で封鎖演習:台湾有事想定か、政府警戒」というタイトルを付したものである。

海軍フリゲートとともに展開した世界最大の巡視船海警2901

しかしながら、報道されている事実関係と日本政府関係者が述べたという言葉の間には疑問を挟まざるを得ない。

宮古海峡は〝海峡〟と呼ばれているものの沖縄本島と宮古島の間に横たわる広大な海域でその幅はおよそ260kmに及ぶ。通常、海峡というのは陸地と陸地に挟まれて極めて狭くなっている海域を呼び、そのような海峡部は狭小であるがゆえに敵の艦船の通航を妨害するための戦略要地として用いられやすいのである。

しかし、宮古海峡は軍事的には海峡とはいえず、この海域をフリゲート3隻と武装巡視船3隻だけで封鎖することは、極めて弱体な海軍力しか保有しない国相手でなければなし得ない。いくら中国海軍に対して弱体化してしまっているとはいえ、アメリカ海軍や海上自衛隊相手に宮古海峡で海上封鎖を行うには巡視船を含んだわずか6隻程度の規模の艦隊では到底不可能で、大規模な艦隊と多数の潜水艦それに航空戦力を繰り出す必要がある。

このような事情にも関わらず日本政府関係者が「海上封鎖を示唆する特異な動き」と語り大手メディアが「宮古海峡で海上封鎖演習」といった報道をなしているのは、それこそ奇異な動きと考えられなくはない。

すなわち、海軍力や空軍力の劇的弱体化のため、中国海洋戦力による東シナ海や南シナ海での軍事的優勢確保を独力では阻止し得ない状況になってしまったアメリカが、日本やフィリピンを対中防波堤として用いアメリカの覇権維持に役立てようとする大戦略に、日米同盟至上主義に凝り固まった日本政府や大手メディアが日本自らを進んで組み入れようとするために中国海軍の動きを大げさな表現で日本国民に伝えようとしているのである。

もちろん中国海軍や海警局が宮古海峡で訓練を繰り返すことは日本にとっての軍事的脅威といえば脅威なのではあるが、日本領域直近とはいえ公海上での中国海軍の動きにいちいち脅威が増していると騒ぎ立てるのは、日本自身の国防体制整備が妥当性を欠いていることの顕れであると言わざるを得ない。

日本政府による宮古海峡をはじめ南西諸島それに尖閣諸島などの防衛体制構築の現状はアメリカ頼みと言われても仕方がないレベルに留まっていると言わざるを得ない。そもそも、日本が九州沿岸から与那国島にかけての自国領域防衛に必要十分な程度の強力な海軍と航空戦力それに地対艦ミサイル戦力(ただし現在宮古島や石垣島に配備を進めようとしている戦力規模では弱体にすぎる)などを保持していたならば、宮古海峡をはじめとする南西諸島周辺海域における海上封鎖を深刻に憂うのは中国海軍ということになるのだ。

この種の防衛体制の構築という自助努力を実施することは、アメリカの軍事的属国としてアメリカ軍事力に頼りきり縋りついていることにくらべると、財政的にも外交的にも比較すべくもないほど楽であろう。ただ恥という観念を捨て去って、伝統ある日本国そして日本人としての誇りを捨て去り、アメリカに媚びへつらっていれば、自主防衛努力という大変な苦労から目を背けることができるからである。

    “征西府” 北村淳 Ph.D.

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