就役間近の中国海軍次期空母「福建」

中国人民解放軍海軍(以下、中国海軍)は、3隻目の航空母艦、射出装置支援離陸・制動装置拘束着艦(CATOBAR)方式の003型航空母艦「福建」(CV-018)を間もなく就役させる。同艦は3基の電磁航空機発射システム(EMALS)を搭載し、早期警戒管制機KJ-600、第5世代ステルス戦闘機J-35、そしてフル装備の第4世代J-15T戦闘攻撃機など、中国の空母運用能力をフルに発揮できる最初の空母である。有人機または無人機への給油を行う、まだ正体不明の空中給油機も積載されるかもしれないがまだ断言するには時期尚早である。

中国海軍空母「福建」credit: Pu Haiyang China Ministry of National Defense

これまで中国海軍が運用してきた2隻の空母、「遼寧」と「山東」は、燃料または兵器の搭載量が少ないJ-15とヘリコプターの運用に限られていた。「福建」は、アメリカ海軍空母のような戦略的な作戦範囲と完全な戦闘能力を保持してはいないものの、第一列島線内海域およびその周辺海域における中国人民解放軍海軍の海軍力に大きく貢献し、アメリカ海軍に対抗する中国海軍による挑戦の新たな一歩となる。そして今注目すべきは、来年中に進水予定の、003型より高性能とされる004型空母に移らなければならない。

中国海軍004型空母については確かなことはほとんど分かっていないが、中国情報筋によると、満載排水量は10万トンを超え、最大90機の航空機(一部は無人機)を搭載する可能性があるとのことだ。西側諸国の防衛アナリストの間ではこの軍艦の推進システムについて意見が分かれており、大半は原子力推進を採用すると考えている。今のところその証拠は乏しいものの、信憑性は高い。

すでに中国は2024年11月に400~500メガワット(MW)の海洋原子炉の試作型を完成させた。これは中国海軍原子力潜水艦に必要な規模よりも大規模な艦艇推進原子炉へのコミットメントを示す高額なプロジェクトである。とはいうものの、乗組員の訓練や艦上運用のための標準操作手順の策定は、迅速に進むものではない。艦艇用原子炉の建造には、プログラムの優先度や資材・人員の入手可能性に応じて、最大12~18か月かかる見込みだ。

さらに、エンジニアリングプラントの配置にも違いがある。1.2ギガワット(GW)の通常型原子炉にはボイラー8基が必要となるが、500MWの原子炉2基または400MWの原子炉4基で対処することができる。いずれにせよ原子炉は大型で、強固な基礎と強力な遮蔽が必要となる。この違いは上空から撮影した建造中の004型空母の画像を見れば一目瞭然だ。004型空母の建造は、プログラムマネージャーが原子炉の完成を待ってエンジニアリングプラントの製作を開始しているため、これまでの空母建造よりも遅れている可能性がある。いずれにせよ、EMALS(電磁航空機発射システム)の必要性とレーザー近接戦闘兵器システムへの関心から、発電能力はエンジニアリングプラントの最大関心事項となるだろう。

中国海軍の現在の作戦上の重点は、中国海軍が「近海」と呼んでいる第一列島線内の中国沿海域の制圧にある。この海域での戦闘では、人民解放軍航空部隊とロケット軍の支援が期待されることを考えると、原子力空母は必要ない。しかし、第一列島線と第二列島線の外側の海域である「遠海」での作戦行動には、原子力空母と機動部隊が不可欠となる。

004型空母の建造は、中国海軍の今後の戦力構築の方向性とペースを示唆している。中国が米海軍の空母に匹敵する原子力空母の建造を意図していることは明らかである。唯一の疑問は、そのような原子力空母は2030年までに就役が見込まれる004型空母なのか、それとも2030年代に就役が見込まれる複数の005型空母なのかということだ。中国共産党は2049年までに世界規模すなわち少なくとも太平洋海域ではアメリカ海軍を凌駕するだけの海軍を保有するという目標を掲げており、原子力空母、そしておそらくは他の軍艦も、この目標達成に重要な役割を果たすだろう。

    アメリカ海軍大佐(退役)カール・O・シュスター

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